ハードウェアとソフトウェアを融合させてケタ違いの性能と処理スケールを実現するシステム基盤群「Engineered Systems」のラインアップとして、オラクルはWebLogic Serverを核とするミドルウェア・マシン「Oracle Exalogic Elastic Cloud」を提供している。このOracle Exalogicが今日の企業にもたらすメリットは何か?他のサーバ製品に対して技術面でどのような優位性を備えるのか? 2回にわたって説明する。(川添貴生)
大幅なコストダウンが難しい理由はいくつか考えられるが、その要因の1つとして、マルチベンダーで構成された複雑なシステム環境が挙げられる。IT環境の構成要素としては、ストレージやネットワーク、サーバ、仮想環境、OS、ミドルウェア、アプリケーションなどがあるが、これらの各レイヤで開発元のベンダーが異なれば、それに伴ってシステムは複雑化し、管理コストもかさんでしまうわけだ。
例えば、トラブル対応を考えた場合、複雑化したシステムでは原因の切り分けが困難であるうえ、どのベンダーに問い合わせるべきかの判断も難しくなる。再現環境を構築するのも容易ではないだろう。
また、パッチの適用やバージョンアップも大変な作業になるのは想像に難くない。これらの作業は他のレイヤへの影響を考慮して進める必要があるが、どの範囲にどういった影響が生じるのかを見極めるのは容易ではないからだ。そうすると、必然的に確認すべき範囲が広がり、大がかりなテストが必要となってしまう。
結局、これらの作業が運用担当者やSIerへの大きな負担となり、それが運用管理コストの増大につながるわけである。
以上のような課題を解決すべく今日、オラクルが提唱しているのがEngineered Systemsというシステム基盤群だ。これはハードウェアとソフトウェアを高いレベルで融合し、レイヤごとの個別最適ではなく、各レイヤをまたいだ全体最適化を行うことで性能向上を図り、さらにシステムの複雑化を解消して運用管理コストを削減するというコンセプトの下に開発された製品群である。このEngineered Systemsのラインアップの1つとして、データベース・マシン「Oracle Exadata」に続いて投入されたのが、ミドルウェア・マシンのOracle Exalogicなのである。
最新版である「Oracle Exalogic X3-2」では、8コアCPUのIntel Xeon Processor E5-2690を採用しているほか、1ノード当たり256GBのDRAMを搭載するなど、さらにパフォーマンスを高めている。また、サーバやストレージなど内部コンポーネント間の通信には40Gpbsの広帯域を持つInfiniBandを使用するほか、SSDをフルに活用した高速なストレージも併せ持つなど、ハードウェア面でも最新の技術が惜しみなくつぎ込まれている。
このOracle Exalogicについて、「“運用管理負担の軽減”という観点で見た場合、企業にとって大きなメリットとなるのがサポート窓口の一元化だ」と話すのは、日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部の田中克哉氏(ビジネス推進本部製品戦略部担当ディレクター)である。
「Oracle Exalogicのサポート体制は他の製品とは異なり、システム・トラブルなどの原因がハードウェアかソフトウェアかにかかわらず、オラクルのサポート窓口が一元的に対応する。そのため、ユーザー側で原因を切り分け、どのベンダーに問い合わせるかを判断するといった手間をかける必要はない。運用管理負担を少しでも減らしたいと考えている企業にとって、このメリットは非常に大きいと考えている」(田中氏)
また導入後、すぐに稼働させられる状態で出荷されるメリットも大きいと田中氏は話す。
「システムを構成するハードウェアやソフトウェアを別々に購入した場合、ユーザー側で一からシステムを組み上げ、動作確認を行う必要がある。 それに対して、Oracle Exalogicはコンポーネント間の接続が済んでいるのはもちろん、ソフトウェアに最新のパッチを適用して動作確認まで完了した状態で出荷される。つまり、ユーザー側で組み立てやテストを行う必要はなく、導入したらすぐに使い始められることもOracle Exalogicの重要なメリットの1つだ」(田中氏)
実際にJMS(Java Message Service)アプリケーションに対してベンチマーク・テストを行ったところ、Oracle Exalogic X3-2は汎用のIAサーバに対して11倍以上、前モデルであるOracle Exalogic X2-2に対しても2.4倍高速という結果が出た。
Oracle Exalogicがここまで速い理由を、田中氏は次のように説明する。
「Exabusでは、3種類の方法でInfiniBandを利用することができる。
1つ目は『IP over InfiniBand』と呼ばれ、InfiniBand上でTCP/IPを利用する方法。InfiniBandは40Gbpsの帯域幅があるので、10GbpsのEthernetと比べるとIP over InfiniBandでも約4倍の性能差が生じる。
2つ目は、SDP(Sockets Direct Protocol)と呼ばれるプロトコルを使い、さらに高速な通信を行う方法だ。こちらはTCP/IPの処理をバイパスすることでネットワーク・レイテンシを減らし、より高速な通信を実現する。
3つ目の最も高い性能が得られる方法が、RDMA(Remote Direct Memory Access)を利用した『Native InfiniBand』で、この場合はOSを介さずにアプリケーション間でダイレクトにデータ転送を行う。
このように、Oracle ExalogicにInfiniBandの利点を最大化するExabusを組み込むことで、汎用のIAサーバに対して圧倒的な性能差を実現している」
複数のレイヤやサブシステムで構成されるのが一般的な現代のアプリケーションでは、レイヤ/サブシステム間で発生するネットワーク通信がパフォーマンス面のボトルネックとなりやすい。Oracle Exalogicでは、広帯域のInfiniBandを利用することに加えて、SDPおよびRDMAといった技術をアプリケーションから直接利用できるようにすることで、この問題を解決しているのだ。
以上、今回はOracle Exalogicが企業にもたらすメリットと、主な特徴を紹介した。次回の後編では、WebLogic Serverの実行環境としてのOracle Exalogicを特徴づける技術としてSDPとRDMAについてより詳しく解説するとともに、企業内/グループ企業内でアプリケーション統合基盤としてOracle Exalogicを利用する際に鍵となる仮想化技術について説明する。
「システムの複雑化」と「運用管理コストの肥大化」という課題を解決すべく登場した次世代のシステム基盤Engineered Systems
今日、多くの企業のIT部門が直面している課題に、「運用管理コストの削減」がある。ただし、これを重要な課題と認識してはいても、なかなか解決が進んでいないのが実情だ。大幅なコストダウンが難しい理由はいくつか考えられるが、その要因の1つとして、マルチベンダーで構成された複雑なシステム環境が挙げられる。IT環境の構成要素としては、ストレージやネットワーク、サーバ、仮想環境、OS、ミドルウェア、アプリケーションなどがあるが、これらの各レイヤで開発元のベンダーが異なれば、それに伴ってシステムは複雑化し、管理コストもかさんでしまうわけだ。
例えば、トラブル対応を考えた場合、複雑化したシステムでは原因の切り分けが困難であるうえ、どのベンダーに問い合わせるべきかの判断も難しくなる。再現環境を構築するのも容易ではないだろう。
また、パッチの適用やバージョンアップも大変な作業になるのは想像に難くない。これらの作業は他のレイヤへの影響を考慮して進める必要があるが、どの範囲にどういった影響が生じるのかを見極めるのは容易ではないからだ。そうすると、必然的に確認すべき範囲が広がり、大がかりなテストが必要となってしまう。
結局、これらの作業が運用担当者やSIerへの大きな負担となり、それが運用管理コストの増大につながるわけである。
以上のような課題を解決すべく今日、オラクルが提唱しているのがEngineered Systemsというシステム基盤群だ。これはハードウェアとソフトウェアを高いレベルで融合し、レイヤごとの個別最適ではなく、各レイヤをまたいだ全体最適化を行うことで性能向上を図り、さらにシステムの複雑化を解消して運用管理コストを削減するというコンセプトの下に開発された製品群である。このEngineered Systemsのラインアップの1つとして、データベース・マシン「Oracle Exadata」に続いて投入されたのが、ミドルウェア・マシンのOracle Exalogicなのである。
圧倒的なパフォーマンスに加えて運用管理コストの削減をもたらすOracle Exalogic
Oracle Exalogicは、Javaで開発されたアプリケーションやオラクルのOracle Applicationsなど、各種アプリケーションの実行基盤となるべく開発された。ソフトウェア(Exalogic Elastic Cloud Software)として組み込まれているのは、アプリケーション・サーバのWebLogic Server、インメモリ・グリッドのOracle Coherence、トランザクション・モニタのOracle Tuxedoなどで、これらが仮想化基盤である「Oracle VM for Exalogic」やOSの上で動作する。最新版である「Oracle Exalogic X3-2」では、8コアCPUのIntel Xeon Processor E5-2690を採用しているほか、1ノード当たり256GBのDRAMを搭載するなど、さらにパフォーマンスを高めている。また、サーバやストレージなど内部コンポーネント間の通信には40Gpbsの広帯域を持つInfiniBandを使用するほか、SSDをフルに活用した高速なストレージも併せ持つなど、ハードウェア面でも最新の技術が惜しみなくつぎ込まれている。
このOracle Exalogicについて、「“運用管理負担の軽減”という観点で見た場合、企業にとって大きなメリットとなるのがサポート窓口の一元化だ」と話すのは、日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部の田中克哉氏(ビジネス推進本部製品戦略部担当ディレクター)である。
Oracle Exalogicの導入メリットを説明する日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部製品戦略部担当ディレクターの田中克哉氏
また導入後、すぐに稼働させられる状態で出荷されるメリットも大きいと田中氏は話す。
「システムを構成するハードウェアやソフトウェアを別々に購入した場合、ユーザー側で一からシステムを組み上げ、動作確認を行う必要がある。
InfiniBandの広帯域を生かしてアプリケーションの実行性能をさらに高める「Exabus」
前述したように、Oracle Exalogicの特徴として、40Gpbsの広帯域を誇るInfiniBandを採用していることが挙げられるが、このInfiniBandと、その上位プロトコルおよびソフトウェア・インタフェースを最適化する技術として「Exabus」が組み込まれていることも強調しておきたいポイントだ。このExabusにより、InfiniBandの性能を最大限に引き出し、アプリケーションの実行性能を飛躍的に高めているのである。実際にJMS(Java Message Service)アプリケーションに対してベンチマーク・テストを行ったところ、Oracle Exalogic X3-2は汎用のIAサーバに対して11倍以上、前モデルであるOracle Exalogic X2-2に対しても2.4倍高速という結果が出た。
Oracle Exalogicがここまで速い理由を、田中氏は次のように説明する。
「Exabusでは、3種類の方法でInfiniBandを利用することができる。
1つ目は『IP over InfiniBand』と呼ばれ、InfiniBand上でTCP/IPを利用する方法。InfiniBandは40Gbpsの帯域幅があるので、10GbpsのEthernetと比べるとIP over InfiniBandでも約4倍の性能差が生じる。
2つ目は、SDP(Sockets Direct Protocol)と呼ばれるプロトコルを使い、さらに高速な通信を行う方法だ。こちらはTCP/IPの処理をバイパスすることでネットワーク・レイテンシを減らし、より高速な通信を実現する。
3つ目の最も高い性能が得られる方法が、RDMA(Remote Direct Memory Access)を利用した『Native InfiniBand』で、この場合はOSを介さずにアプリケーション間でダイレクトにデータ転送を行う。
このように、Oracle ExalogicにInfiniBandの利点を最大化するExabusを組み込むことで、汎用のIAサーバに対して圧倒的な性能差を実現している」
複数のレイヤやサブシステムで構成されるのが一般的な現代のアプリケーションでは、レイヤ/サブシステム間で発生するネットワーク通信がパフォーマンス面のボトルネックとなりやすい。Oracle Exalogicでは、広帯域のInfiniBandを利用することに加えて、SDPおよびRDMAといった技術をアプリケーションから直接利用できるようにすることで、この問題を解決しているのだ。
以上、今回はOracle Exalogicが企業にもたらすメリットと、主な特徴を紹介した。次回の後編では、WebLogic Serverの実行環境としてのOracle Exalogicを特徴づける技術としてSDPとRDMAについてより詳しく解説するとともに、企業内/グループ企業内でアプリケーション統合基盤としてOracle Exalogicを利用する際に鍵となる仮想化技術について説明する。