午前中の基調講演でJavaの最新動向を一挙に把握
2012年に米国サンフランシスコで開催されたJavaOne 2012は、オラクルの「Java開発者とともにJavaの未来を作っていきたい」という思いを込めた「Make the Future Java」というテーマを掲げて開催された。同じテーマで開催されるJava Day Tokyo 2013は、JavaOne 2012開催時以降のアップデート情報を含む技術セッションを中心に構成される。午前中の基調講演には、米国オラクルでJava開発部門を主導するナンディーニ・ラマニ氏とキャメロン・パーディ氏が登壇。Java SE、JavaFX、Java Embedded、Java EEの最新動向を紹介する。
また、「Javaコミュニティとの協力なくして、Javaの未来はない」をモットーとするオラクルにおいて、Javaコミュニティとの協業を主導するJavaコミュニティ・リードのシャラット・チャンダー氏も来日。Javaコミュニティに関する最新の動向を報告する予定だ。
それでは以降、Java Day Tokyo 2013で実施されるセッションの中から、主なものを紹介していこう。
Java SE 8の新機能「Lambda式」、「JavaScript on JVM」について解説
まずは今年正式リリースが予定されているJava SE 8の新機能について解説するセッションを2つ取り上げる。すでに早期試用版も公開され、実際にその動作を試すことのできるJava SE 8の目玉の1つは、Lambda式の追加だ。これについて解説するのは、Javaテクノロジー・エバンジェリストのサイモン・リッター氏による次のセッションである。
●A-2 14:35-15:25
「Java SE 8 による関数プログラミングの構文と並列処理のシンプル化」
講演者:サイモン・リッター(オラクル・コーポレーション Java Product Management Java Technology Evangelist)
また、サイモン・リッター氏は、“JavaScript on JVM”をテーマにした次のセッションでも講師を務める。
●B-4 16:45-17:35
「InvokeDynamicからNashornのご紹介」
講演者:サイモン・リッター(オラクル・コーポレーション Java Product Management Java Technology Evangelist)
「Nashornは、Java SE 8から標準搭載されるJavaScriptの実行エンジンです。JVM上で動作するNashornを使うことにより、JVMに備わるスケーラビリティや運用保守性が、JavaScriptアプリケーションでも利用可能となります。これまで、サーバ・サイドでJavaScriptを使う場合はスケーラビリティ、運用保守の面で不安がありましたが、実行環境がJVMになれば、JVMの利点をJavaScriptでも享受できるのです。ぜひこのセッションの内容も参考にして、JavaとJavaScriptの利点を最大限に生かしたアプリケーションを作っていただきたいですね」(寺田氏)
JavaFXアプリはRaspberry Piでも、タブレットでも動く
Javaの新GUI開発フレームワークとして期待されるJavaFXは、デスクトップ・アプリケーションにとどまらず、さまざまな領域での利用が見込まれている。タブレットも含め現在、さまざまなクライアント・プラットフォームが乱立する中、マルチプラットフォームなJavaFXの可能性を紹介すべく実施されるのが次のセッションだ。●B-1 13:30-14:20
「Raspberry Pi NightHacking (Java SE / JavaFXを楽しもう)」
講演者:ステファン・チン(オラクル・コーポレーション Java Product Management Java Technology Ambassador)
「JavaFXならば、デスクトップ用に開発したアプリケーションを、そのままARMプロセッサ搭載のRaspberry Pi上で動かすことができます。GPUを使いOpenGLで高速に描画するので、JavaFXによるGUIがサクサク動くんですよ」(笹沼氏)
JavaFXだけでなく、Raspberry Piに興味のある方も必聴のセッションである。
もう1つ、JavaFXの可能性を示すものとして予定されているのが、次のセッションだ。
●A-4 16:45-17:35
「タブレット用のJavaFXアプリケーション開発」
講演者:ジム・ウィーバー(オラクル・コーポレーション Java Product Management)
「これらのセッションの講師を務めるステファン・チン氏とジム・ウィーバー氏は、JavaFXの解説書として定評のある『Pro JavaFX 2: A Definitive Guide to Rich Clients with Java Technology』の著者としても知られています。今回は、JavaFXを知り尽くした2人による解説を直接聞く絶好の機会です。JavaFX開発者の皆さんは楽しみにしてください」(寺田氏)
Device to Data Centerで組み込みJavaも新たな活用領域へ
今日、スマートメーターのようなセンサー搭載機器など各種デバイスの普及/活用が急ピッチで進もうとしている。そうした中で危惧されていることの1つが、ソフトウェアの開発や管理の対象となるプラットフォームの増加だ。各種のデバイスに加えて、ネットワークの終端側でデバイスの制御などを行うゲートウェイ、そしてデバイスと連携して処理を行うデータセンター側のシステムまで、今後はさまざまなプラットフォームに対する開発/管理が必要となるのだ。この「Device to Data Center(D2D)」とも呼ばれるデバイス/データセンター間をまたいだ処理アーキテクチャの領域でも、組み込みJava(Java Embedded)の適用が着々と進んでいる。その狙いは、従来バラバラだったデバイス、ゲートウェイ、データセンター側プラットフォームをJavaによって統一することで、ソフトウェア開発から管理までの負担を大幅に減らすことにある。この中で、Java Embeddedが適用対象とする主な領域は、下図左側に示す「デバイス」と「ゲートウェイ」だ。
D2Dでは、デバイスやゲートウェイ、データセンター側システムをすべてJavaによって開発することで、エンド・ツー・エンドでの一貫したセキュリティ管理、既存システムとの容易な統合、開発効率の向上、そしてタイム・ツー・マーケットの短縮を実現する。
また、デバイス側で発生したデータを、その都度データセンターに送るのではなく、中間に配したゲートウェイなどによって高速に処理/選別し、必要なデータだけをネットワークに送出することで、ネットワーク/データセンターの負荷を大幅に軽減する。この一連の流れの中で、要となるゲートウェイ上で動作するJava Embedded技術について、笹沼氏が次のセッションで解説する。
●C-3 15:40-16:30
「Device to Data Centerを実現するJava Embedded Suite」
講演者:笹沼満(日本オラクル Java Embedded Global Business Unit シニアセールスコンサルタント)
一方、次のセッションでは、D2Dにおけるデバイス側でのJava Embedded技術の動向や応用例が紹介される。
●B-2 14:35-15:25
「Internet of ThingsにおけるJava: Small, Smart, Connected (Java ME Embedded)」
講演者:テレンス・バー(オラクル・コーポレーション Senior Technologist and Principal Product Manager)
Java EE 7の新機能「WebSocket」、「バッチ処理」、「大規模並列処理」のセッションも
Javaの各プラットフォームでWebLogic Channelにとって最大の関心事は、やはりJava EEだろう。今年正式リリースされるJava EE 7の新機能を解説するセッションもしっかりと用意されている。講師の1人は、米国オラクルのJava EEエバンジェリスト、アルン・グプタ氏だ。グプタ氏が登壇するのは、まずJava EE 7で追加される「WebSocket」を取り上げる次のセッションである。
●A-1 13:30-14:20
「ここからはじめる、JSR-356 WebSocket」
講演者:アルン・グプタ(オラクル・コーポレーション Software Development Java Evangelist)
また、グプタ氏は次のセッションでも講師を務める。
●A-3 15:40-16:30
「Java プラットフォームにおける Batch アプリケーション (JSR 352)」
講演者:アルン・グプタ(オラクル・コーポレーション Software Development Java Evangelist)
Java EE 7に関してはもう1つ、寺田氏が講師を務める次のセッションも必聴だ。
●C-4 16:45-17:35
「エンタープライズ環境における並列処理の実装方法について」
講演者:寺田佳央(日本オラクル製品事業統括 - Fusion Middleware事業統括本部 Java エバンジェリスト)
「Javaは以前からマルチスレッドをサポートしていましたが、従来の機能ではマルチコア環境の能力を十分に引き出すことはできませんでした。そこで、Java SE 6で大規模な並列処理を簡単に実装するための機能としてConcurrency Utilitiesが追加されましたが、それをJava EEでも使えるようにしたものがConcurrency Utilities for Java EEです。セッションでは、Concurrency Utilities for Java EEにより、マルチコア環境の能力をいかに余すことなく使えるか、デモも交えて解説します。大規模処理でJavaを使っている方は、ぜひご聴講ください」(寺田氏)
さらにもう1つ、Java EEに関して注目していただきたいのが、次のセッションだ。
●C-2 14:35-15:25
「エスケイプ・フロム・レガシーJ2EE」
講演者:大橋勝之(日本オラクルコンサルティングサービス統括 - テクノロジーソリューションコンサルティング統括本部 - クラウド&ITソリューションコンサルティング本部ソリューションマネージャー)
“Java IDE祭り”に“Javaパズラー”など、Javaコミュニティ主導のセッションも
Java Day Tokyo 2013では、国内Javaコミュニティとのコラボレーションで実現したセッションも用意される。その1つが「Java統合開発環境の最新トレンドについて(仮題)」だ。このセッションでは、「Eclipse」、「NetBeans」という2大Java統合開発環境(IDE)に加えて、最近は日本でも注目が高まっている「IntelliJ IDEA」の3つを取り上げ、それぞれのJava IDEを熟知した開発者ら(Eclipseは竹添直樹氏、NetBeansはきしだなおき氏、IntelliJ IDEAは今井勝信氏)が、その最新動向や特徴、使いどころなどを紹介する。
もう1つのセッションは、日本Javaユーザーグループ(JJUG)の協力を得て実施される「帰ってきたJavaパズラー」である。
Javaパズラーとは、Java開発で多くの方が陥りがちな間違いなどを、全員参加型のクイズ形式で出題して解答を競う催しだ。JavaOneの恒例イベントとして親しまれてきたこのJavaパズラーが、Java Day Tokyo 2013で帰ってくる。このセッションに参加するだけでも、Java Day Tokyo 2013の楽しさを堪能できるだろう。
これらのセッションの後には、夜の部として「Java the Night」も用意されている。JavaOneをはじめ、オラクルが開催する公式Javaイベントの特徴は、昼の部だけでなく、夜の部も熱く盛り上がる点だ。このJava the Nightにもご期待いただきたい。
このほか、Java Day Tokyo 2013の会場内には、Javaグッズの公式ストア「Java Store」、Java Embedded Suiteをはじめ最新のJavaソリューションが展示される「展示コーナー」、そしてオラクル・ユニバーシティによる「Java認定資格無料スキルチェック・コーナー」が設けられる。セッションの合間には、ぜひこれらのコーナーも覗いてみてほしい。
以上、5月14日に秋葉原UDXで開催されるJava Day Tokyo 2013の見所を紹介した。参加登録は次のサイトで受け付けている。早期の満席が予想されるため、お早めにお申し込みいただきたい。